恵比寿の歯科医が教える!マウスピース矯正とワイヤー矯正の違い
「歯並びを治したいけど、マウスピース矯正とワイヤー矯正、どっちがいいんだろう?」
矯正治療を検討する際、多くの方がこのような疑問を抱えています。見た目や治療期間、費用など、さまざまな観点から比較したいと思いますよね。
私は歯科医師として15年以上の臨床経験があり、数多くの矯正治療を手がけてきました。マウスピース矯正もワイヤー矯正も、それぞれに良さがあります。
この記事では、歯科医師の視点から両者の「本当の違い」について詳しく解説します。あなたに合った矯正方法を選ぶための参考にしてください。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の基本的な違い
まずは、マウスピース矯正とワイヤー矯正の基本的な違いを見ていきましょう。
マウスピース矯正は、透明なプラスチック素材でできたマウスピース型の装置を使って歯を動かしていく方法です。一方、ワイヤー矯正は歯に金属製のブラケットを取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かしていきます。
両者の最も大きな違いは、「取り外しができるかどうか」です。マウスピース矯正は食事や歯磨きの際に取り外すことができますが、ワイヤー矯正は歯に固定されるため、治療期間中は取り外せません。
この基本的な違いが、治療中の生活の質や治療効果に大きく影響します。それでは、具体的にどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
見た目の違い
マウスピース矯正の最大の魅力は、その「目立ちにくさ」です。透明なプラスチック素材でできているため、装着していても周囲からはほとんど気づかれません。
特に、インビザライン(アメリカのアライン・テクノロジー社が開発したマウスピース型矯正治療法)のマウスピースは、薄くて透明性が高いプラスチック素材で作られています。そのため、他のマウスピース矯正やワイヤー矯正と比べて目立ちにくいのが特徴です。
一方、ワイヤー矯正は金属製のブラケットとワイヤーを使用するため、どうしても目立ってしまいます。最近では白色や透明色の審美ブラケットも増えていますが、完全に目立たなくすることは難しいでしょう。
接客業や営業職など、人と接する機会の多い方にとって、この違いは非常に重要なポイントになります。
治療効果の違い
「マウスピース矯正は本当に効果があるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、マウスピース矯正もワイヤー矯正も、適切な症例に適用すれば十分な効果が期待できます。2018年の研究では、マウスピース矯正はワイヤー矯正と同等の効果があると報告されています。
ただし、それぞれ得意・不得意があります。ワイヤー矯正は大きく歯を動かしたり、細かく調整したりする力に優れており、幅広い症例に対応できます。一方、マウスピース矯正は歯体移動のような一部の動きが苦手ですが、技術の進歩により適応範囲は広がっています。
私の臨床経験からも、症例によって適切な方法を選ぶことが重要だと感じています。
生活への影響の違い
矯正治療は長期間にわたるため、日常生活への影響も重要な比較ポイントです。
マウスピース矯正とワイヤー矯正では、食事や歯磨きなど日常生活のさまざまな場面で違いが生じます。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
まずは食事について。マウスピース矯正は食事の際に装置を外すため、これまでと変わらない食事を楽しめます。一方、ワイヤー矯正では食べられるものに制限があります。
粘着性の高いガムやキャラメル、お餅といった食べ物は矯正装置に付着してしまう可能性があるのでNG。また、歯に挟まりやすいニラやネギといった野菜類も避けた方が良いでしょう。
歯で噛みちぎらなければいけない硬めのパンやスルメイカなども、強い力で噛んだときに矯正装置が外れてしまう可能性があるので注意が必要です。
歯磨きのしやすさ
口腔ケアの面でも大きな違いがあります。マウスピース矯正は装置を取り外して歯磨きができるため、これまでと同じように丁寧な歯磨きが可能です。
一方、ワイヤー矯正では装置が邪魔になって歯磨きがしづらくなります。ブラケットの周りや装置の隙間に食べかすが残りやすく、丁寧に磨くためには歯ブラシだけでなく歯間ブラシやタフトブラシなどの補助用具が必要になります。
タフトブラシとは、小さな毛束になっている歯ブラシのことで、一般的な歯ブラシでは届きにくい小さな隙間にもブラシが届くため、矯正装置の間などを掃除するのに適しています。
歯磨きがしづらいと虫歯や歯周病のリスクが高まるため、この違いは非常に重要です。
痛みや違和感の違い
矯正治療では、歯を動かす際に歯周組織に圧力がかかるため、痛みを伴うことがあります。
マウスピース矯正は、弱い力で少しずつ歯を動かすため、痛みを感じにくいのが特徴です。例えば、インビザラインは歯根膜(歯根と歯を支える歯槽骨の間にある薄い膜)に負担をかけない程度の弱い力で歯を動かすため、痛みを感じることはほとんどありません。
一方、ワイヤー矯正では比較的強い力で歯を動かすため、特に調整直後は痛みを感じることが多いです。また、金属製の装置が頬や唇の内側に当たって傷ついてしまうこともあります。
痛みに敏感な方や、違和感が苦手な方にとっては、この違いは大きなポイントになるでしょう。
治療期間と通院頻度の違い
「矯正治療ってどのくらいの期間がかかるの?」
これは多くの患者さんが気になる点ですよね。治療期間は歯並びの状態によって大きく異なりますが、一般的な傾向として比較してみましょう。
ワイヤー矯正は、常に矯正力が働いているため、マウスピース矯正に比べて治療期間が短くなる傾向があります。また、ワイヤー矯正は強い力で歯を動かすことができるため、複雑な症例でも効率的に治療を進められます。
一方、マウスピース矯正は装着時間が1日20時間以上必要で、装着時間が不足すると治療効果が得られにくくなります。そのため、自己管理がしっかりできない場合は治療期間が長引く可能性があります。
ただし、マウスピース矯正の場合、通院頻度は1〜2ヶ月に1回程度と少なく、1回あたりの診療時間も短いのが特徴です。一方、ワイヤー矯正は月1回程度の通院が必要で、調整に時間がかかることもあります。
忙しい方や通院が難しい方にとっては、通院頻度の少なさはマウスピース矯正の大きなメリットと言えるでしょう。
自己管理の重要性
マウスピース矯正の最大の課題は「自己管理」です。1日20時間以上の装着が必要なため、装着忘れや長時間の未装着があると治療効果が得られません。
食事の後にマウスピースを装着し忘れたり、「ちょっとだけ」と外したまま時間が経ってしまったりすると、治療計画通りに歯が動かなくなってしまいます。
私の患者さんの中にも、自己管理ができずに治療が長引いてしまったケースがあります。
一方、ワイヤー矯正は装置が固定されているため、自己管理の負担が少ないのが特徴です。自分で装置を外す必要がないため、確実に矯正力が働き続けます。
自分の生活スタイルや性格を考慮して、どちらが合っているかを判断することが大切です。
費用と保険適用の違い
矯正治療を検討する際、費用も重要な判断材料になります。
一般的に、マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも高額になる傾向があります。これは、マウスピース矯正が比較的新しい技術であることや、一人ひとりに合わせたマウスピースを何セットも製作する必要があるためです。
特に、インビザラインなどの有名ブランドのマウスピース矯正は、独自の技術やサポート体制が整っているため、費用が高くなります。
また、矯正治療は基本的に保険適用外の自費診療となります。ただし、顎変形症などの機能的な問題がある場合は、一部保険が適用されることもあります。
費用面では、クリニックによって料金設定が異なるため、複数の医院で相談することをおすすめします。また、分割払いやローンなどの支払い方法も確認しておくと良いでしょう。
対応できる症例の違い
どんな歯並びの問題でも両方の矯正方法で対応できるわけではありません。それぞれ得意・不得意があります。
ワイヤー矯正は、ほぼすべての症例に対応できる「万能型」の矯正方法です。大きく歯を動かす必要がある場合や、複雑な歯の移動が必要な場合でも対応できます。
一方、マウスピース矯正は、かつては軽度から中等度の症例に限られていましたが、技術の進歩により適応範囲は広がっています。特にインビザラインは、データに基づいた改良によって、ワイヤー矯正に近い適応の幅を獲得しています。
ただし、大きな歯の回転や歯の大幅な圧下(歯を奥に押し込む動き)を必要とする症例では、従来のワイヤー矯正の方が優れているという見解が、複数の学会発表や論文で指摘されています。
最終的には、歯科医師の診断によって適切な矯正方法を選ぶことが重要です。
どちらを選ぶべき?判断のポイント
ここまで、マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いについて詳しく見てきました。では、実際にどちらを選ぶべきなのでしょうか?
結論から言うと、あなたの歯並びの状態やライフスタイル、優先したいポイントによって最適な選択は変わります。ここでは、判断の参考になるポイントをいくつか紹介します。
マウスピース矯正が向いている人
次のような方には、マウスピース矯正がおすすめです。
- 矯正装置を目立たせたくない方
- 食事を楽しみたい方
- 痛みや違和感が苦手な方
- 金属アレルギーがある方
- 自己管理がしっかりできる方
- 通院回数を少なくしたい方
特に、接客業や営業職など人と接する機会の多い方や、見た目を重視する方にとって、マウスピース矯正の「目立ちにくさ」は大きなメリットになります。
また、自分で装置の着脱ができるため、特別なイベントや写真撮影の際に一時的に外すこともできます。ただし、1日20時間以上の装着が必要なので、自己管理の意識が高い方に向いています。
ワイヤー矯正が向いている人
次のような方には、ワイヤー矯正がおすすめです。
- 歯並びの乱れが大きい方
- 咬み合わせの問題も改善したい方
- 自己管理が苦手な方
- 確実な治療効果を求める方
- 治療期間をできるだけ短くしたい方
- 費用を抑えたい方
ワイヤー矯正は、幅広い症例に対応できる万能型の矯正方法です。複雑な歯の移動が必要な場合や、大きく歯を動かす必要がある場合は、ワイヤー矯正の方が適している場合が多いです。
また、装置が固定されているため自己管理の負担が少なく、確実な治療効果が期待できます。マウスピース矯正の「見た目の良さ」や「取り外しの自由さ」がそれほど重要でない方には、ワイヤー矯正をおすすめします。
併用という選択肢
実は、マウスピース矯正とワイヤー矯正を併用するという選択肢もあります。
例えば、初めはワイヤー矯正で大きく歯を動かし、ある程度歯並びが整ったらマウスピース矯正に切り替えるという方法です。これにより、それぞれの矯正方法の長所を活かした治療が可能になります。
また、部分的にワイヤー矯正を行い、残りをマウスピース矯正で治療するという方法もあります。
併用の可能性については、歯科医師と相談しながら検討するとよいでしょう。
まとめ:あなたに合った矯正方法を選ぼう
マウスピース矯正とワイヤー矯正、それぞれの特徴や違いについて詳しく解説してきました。
マウスピース矯正は「目立ちにくさ」「痛みの少なさ」「食事や歯磨きの自由さ」が魅力ですが、「自己管理の必要性」「適応症例の制限」「費用の高さ」というデメリットもあります。
一方、ワイヤー矯正は「幅広い症例への対応力」「確実な治療効果」「自己管理の負担の少なさ」が魅力ですが、「見た目の目立ちやすさ」「食事制限」「歯磨きのしづらさ」というデメリットがあります。
どちらが「良い」「悪い」ということではなく、あなたの歯並びの状態やライフスタイル、優先したいポイントによって最適な選択は変わります。
最終的には、歯科医師としっかり相談しながら、あなたに合った矯正方法を選ぶことが大切です。カウンセリングでは遠慮せずに疑問や不安を伝え、納得のいく治療計画を立てましょう。
私たちココロデンタルでは、マウスピース矯正とワイヤー矯正の両方に対応しており、患者さん一人ひとりに合わせた治療をご提案しています。矯正治療をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの素敵な笑顔のために、最適な矯正治療をサポートいたします。
ココロデンタルでは、無料カウンセリングも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
著者情報
ココロデンタル 院長 小林 弘樹 Hiroki Kobayashi
経歴
2010年 日本大学歯学部卒業
2010年 日本大学歯学部附属歯科病院勤務
2011年 大崎シティデンタルクリニック勤務
2015年 麻布シティデンタルクリニック勤務
2017年 ココロデンタル恵比寿
2021年 ココロデンタル西麻布