シュアスマイルvsインビザライン|マウスピース矯正徹底比較
マウスピース矯正の2大ブランド:シュアスマイルとインビザライン
近年、目立たない矯正治療として人気を集めているマウスピース矯正。特に「インビザライン」はマウスピース矯正の代名詞とも言われるほど知名度が高まっています。しかし、実はもう一つの選択肢として「シュアスマイル」という製品も注目を集めているのをご存知でしょうか?
マウスピース矯正を検討している方にとって、どちらを選ぶべきか迷うところだと思います。両者にはどのような違いがあり、どのような特徴があるのでしょうか。
歯科医師として多くの患者さんの矯正治療に携わってきた経験から、この2つのマウスピース矯正の違いを徹底的に比較していきます。あなたに最適な選択ができるよう、専門的な視点からわかりやすく解説していきましょう。
シュアスマイルとインビザラインの基本情報
まずは、シュアスマイルとインビザラインの基本的な情報から見ていきましょう。両者はともに透明なマウスピースを使用した矯正装置ですが、開発元や歴史、特徴に違いがあります。
インビザラインとは
インビザラインは、アメリカのアライン・テクノロジー社が開発したマウスピース矯正システムです。1997年に設立された同社は、マウスピース矯正のパイオニアとして知られています。
世界100カ国以上で累計2000万人以上(2025年6月現在)の患者さんが使用しており、マウスピース矯正市場では圧倒的なシェアを誇っています。日本でも多くの歯科医院で導入されており、「マウスピース矯正」と言えば「インビザライン」と連想される方も多いでしょう。
インビザラインの治療では、専用の3Dシミュレーションソフト「クリンチェック」を使用して治療計画を立案します。患者さんの歯型データをもとに、コンピュータ上で歯の動きをシミュレーションし、それに基づいて一連のマウスピース(アライナー)を作製します。
シュアスマイルとは
一方、シュアスマイル(SureSmile)は、世界最大手の歯科機器メーカーであるデンツプライシロナ社が提供するマウスピース矯正システムです。デンツプライシロナ社は、セラミックの詰め物・被せ物を機械が自動で設計・作製するシステム「セレック」や、インプラント分野でも世界トップクラスのシェアを誇る企業として知られています。
シュアスマイルは日本では2021年に発売されたばかりの比較的新しい製品ですが、世界的な大企業が開発した信頼性の高いシステムとして注目を集めています。
シュアスマイルも3Dシミュレーションを用いた治療計画を立案しますが、インビザラインとは異なるソフトウェアを使用しています。また、振動型のフィッティング装置「VPro」が標準で付属するなど、独自の特徴を持っています。
シュアスマイルとインビザラインの共通点
シュアスマイルとインビザラインには、いくつかの重要な共通点があります。これらを理解することで、マウスピース矯正の基本的なメリットが見えてきます。
フルデジタル式の治療プロセス
両システムとも、治療のすべての工程をデジタル技術で行う「フルデジタル式」のマウスピース矯正です。口腔内スキャナーで歯型を取り、コンピュータ上で治療計画を立て、それに基づいてマウスピースを製作します。
このフルデジタル式のアプローチにより、歯科医師や歯科技工士など、人の手が介することによって発生し得るヒューマンエラーを極限まで減らすことができます。もちろん、治療計画の立案・修正・変更には歯科医師も関与しますが、精密な計画に基づいた治療が可能となります。
透明で取り外し可能な装置
どちらのシステムも、透明なプラスチック製のマウスピースを使用するため、装着していてもほとんど目立ちません。また、食事や歯磨きの際には取り外すことができるので、日常生活への影響が少ないという大きなメリットがあります。
従来のワイヤー矯正では、装置が目立つことや、食べ物が装置に挟まりやすいなどの問題がありましたが、マウスピース矯正ではそうした悩みを大幅に軽減できます。
実績のある大手メーカーによる開発
シュアスマイルとインビザラインは、どちらも歯科業界において実績のある大手メーカーが開発・提供しているシステムです。インビザラインはマウスピース矯正専門のアライン・テクノロジー社、シュアスマイルは総合歯科機器メーカーのデンツプライシロナ社という違いはありますが、いずれも信頼性の高い企業が提供している点は共通しています。
世界中で多くの症例に使用されており、その安全性と効果は広く認められています。格安のマウスピース矯正(LCM:ローコストマウスピース)とは一線を画す、高品質な矯正システムと言えるでしょう。
シュアスマイルとインビザラインの違い
次に、シュアスマイルとインビザラインの主な違いについて詳しく見ていきましょう。それぞれの特徴を理解することで、自分に合った選択ができるようになります。
治療期間と保証期間
インビザラインの治療期限は最上位のプランで5年間となっていますが、シュアスマイルは3年間です。ただし、標準的な症例では3年以上の治療期間が必要になることはまれなので、ほとんどの場合はシュアスマイルの治療期間でも十分と言えます。
非常に複雑な症例や、治療に長期間を要する可能性がある場合は、インビザラインの方が有利かもしれません。しかし、多くの患者さんにとっては、どちらを選んでも治療期間に大きな差はないでしょう。
マウスピースの材質と形状
シュアスマイルとインビザラインでは、使用するマウスピース(アライナー)の材質が異なります。また、シュアスマイルでは、マウスピースのトリムライン(縁の形状)を変えることができるという特徴があります。
インビザラインのマウスピースは歯の形に合わせた「スカラップライン」と呼ばれる形状のみですが、シュアスマイルでは歯茎を覆う「ストレートライン」にすることも可能です。症例によって使い分けることができるため、治療の柔軟性が高いと言えるでしょう。
治療加速装置の有無
シュアスマイルのコンプリートオプションには、振動型のフィッティング装置「VPro」が標準で付属しています。これは治療を加速させる効果が期待できる装置です。
インビザラインでも同様の装置を使用することは可能ですが、別途購入する必要があります。治療期間の短縮を希望する方にとっては、シュアスマイルの方がコストパフォーマンスが良いかもしれません。
治療計画ソフトウェアの違い
インビザラインは「クリンチェック」という治療計画ソフトを使用しており、長年の改良により非常に使いやすく進化しています。最近では、CBCTデータを利用して歯根の動きまで確認できるようになり、より精密な治療計画が可能になっています。
一方、シュアスマイルも独自の治療計画ソフトを持っており、実用的で使いやすいように設計されています。ただし、細かい指示を出す際には、インビザラインは日本語で対応可能ですが、シュアスマイルは英語のみという違いがあります。
どのような症例に適しているか
マウスピース矯正は万能ではありません。どのような症例に適しているのか、また、シュアスマイルとインビザラインでは適応症例に違いがあるのかを見ていきましょう。
インビザラインの適応症例
インビザラインは長年の実績と改良により、適応範囲が非常に広くなっています。軽度から中等度の不正咬合はもちろん、比較的複雑な症例にも対応可能です。
インビザラインには、症例の難易度に合わせて「インビザラインファースト」(小児向け)、「エクスプレスパッケージ」「ライトパッケージ」「モデレートパッケージ」「コンプリヘンシブパッケージ」など、様々なプランが用意されています。
特に「コンプリヘンシブパッケージ」では、CBCTデータを利用して歯根の動きまで確認できるため、より複雑な症例にも対応可能です。
シュアスマイルの適応症例
シュアスマイルには、「コンプリートオプション」と「セレクトオプション」の2種類があります。「コンプリートオプション」は治療期間が3年、追加アライナーが無制限で、CBCTデータも組み込める設定になっています。「セレクトオプション」は軽度の症例向けです。
シュアスマイルは、インビザラインのコンプリヘンシブパッケージとモデレートパッケージの中間に位置すると考えられています。比較的新しいシステムですが、デンツプライシロナ社の技術力を背景に、幅広い症例に対応できるよう設計されています。
マウスピース矯正の限界
どちらのシステムも優れた矯正装置ですが、すべての症例に適しているわけではありません。特に、大きな歯の回転や歯の大幅な圧下(歯を下げる動き)を必要とする症例では、従来のワイヤー矯正の方が優れているという見解が複数の学会発表や論文で指摘されています。
また、顎の骨格的な問題が大きい場合や、重度の不正咬合の場合は、マウスピース矯正だけでは十分な効果が得られないこともあります。そのような場合は、外科的矯正治療や従来のワイヤー矯正との併用が必要になることもあります。
矯正治療を検討する際は、必ず専門医の診断を受け、自分の症例に最適な治療法を選ぶことが重要です。
マウスピース矯正のリスクと注意点
マウスピース矯正は多くのメリットがありますが、同時にいくつかのリスクや注意点も存在します。治療を始める前に、これらを十分に理解しておくことが大切です。
マウスピース矯正に伴うリスク
歯科医を対象とした調査によると、マウスピース矯正の治療には「多少のリスクはある」と回答した医師が65.0%、「かなりのリスクがある」と回答した医師が26.6%いました。つまり、9割以上の歯科医師がマウスピース矯正にはリスクがあると考えています。
具体的なリスクとしては、「治療に長時間・長期間を要する」「むし歯や歯周病のリスクが高くなる」「痛みが強い場合がある」などが挙げられています。
また、同調査では、「間違った方法によるマウスピース矯正を推奨・提供している歯科医・歯科医院はありますか?」という質問に対して、59.2%の歯科医師が「ある」と回答しています。歯科医院選びは慎重に行う必要があるでしょう。
装着時間の重要性
マウスピース矯正の成功には、患者さん自身の協力が不可欠です。マウスピースは1日20〜22時間の装着が推奨されており、この時間を守らないと十分な効果が得られません。
食事や歯磨きの時以外は常に装着する必要があり、この点が患者さんにとって大きな負担になることもあります。自己管理ができない方や、装着時間を守れない可能性がある方は、固定式のワイヤー矯正の方が適しているかもしれません。
定期的な通院の必要性
マウスピース矯正は通院回数が少なくて済むというメリットがありますが、それでも定期的な通院は必要です。一般的には6〜8週間に1回程度の通院が必要とされています。
通院時には、治療の進行状況を確認し、必要に応じて調整を行います。予定通りに通院できない場合、治療期間が延びたり、期待した効果が得られなかったりする可能性があります。
シュアスマイルとインビザラインの選び方
ここまで、シュアスマイルとインビザラインの特徴や違いについて見てきました。では、実際にどちらを選べばよいのでしょうか? 選択のポイントをいくつか紹介します。
症例の複雑さで選ぶ
非常に複雑な症例や、治療に長期間を要する可能性がある場合は、5年間の治療期限があるインビザラインの方が安心かもしれません。一方、軽度から中等度の不正咬合であれば、どちらのシステムでも十分に対応可能です。
特に、シュアスマイルのコンプリートオプションはCBCTデータも組み込めるため、比較的複雑な症例にも対応できます。歯科医師と相談しながら、自分の症例に最適なシステムを選びましょう。
治療期間の短縮を希望する場合
治療期間をできるだけ短くしたい場合は、振動型のフィッティング装置「VPro」が標準で付属するシュアスマイルのコンプリートオプションが有利かもしれません。
VProは1日数分間使用するだけで、マウスピースのフィット感を向上させ、治療を加速させる効果が期待できます。インビザラインでも同様の装置を使用することは可能ですが、別途購入する必要があります。
コストパフォーマンスで選ぶ
シュアスマイルは後発製品としてコストを抑えられる面があります。また、前述のようにVProが標準で付属するため、治療加速を希望する方にとってはコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。
ただし、歯科医院によって料金設定は異なりますので、実際の費用については各医院に確認する必要があります。単純に価格だけで選ぶのではなく、総合的に判断することが大切です。
歯科医院の経験と設備で選ぶ
最終的には、どちらのシステムを選ぶかよりも、どの歯科医院で治療を受けるかの方が重要かもしれません。マウスピース矯正の経験が豊富な歯科医師や、最新の設備が整っている医院を選ぶことで、より質の高い治療を受けることができます。
特に、口腔内スキャナーやCBCTなどのデジタル機器を導入している医院では、より精密な診断と治療計画が可能です。医院選びの際は、これらの設備の有無や、マウスピース矯正の実績なども確認するとよいでしょう。
まとめ:あなたに最適なマウスピース矯正を選ぼう
シュアスマイルとインビザラインは、どちらも信頼性の高いマウスピース矯正システムです。どちらを選んでも、適切な治療計画と患者さん自身の協力があれば、満足のいく結果が得られるでしょう。
選択のポイントをまとめると、以下のようになります:
- 症例の複雑さ:非常に複雑な症例ではインビザラインが有利
- 治療期間:標準的な症例ではどちらも大差なし
- 治療加速:VProが標準付属のシュアスマイルが有利
- コスト:シュアスマイルの方がコストパフォーマンスが良い場合も
- 医院の経験と設備:最終的には医院選びが重要
マウスピース矯正は、見た目が目立たず、日常生活への影響が少ないという大きなメリットがありますが、すべての症例に適しているわけではありません。また、成功には患者さん自身の協力が不可欠です。
矯正治療を検討する際は、必ず複数の歯科医院でカウンセリングを受け、自分の症例に最適な治療法を選ぶことをおすすめします。そして、信頼できる歯科医師と二人三脚で、理想の歯並びを目指しましょう。
当院ココロデンタルでも、マウスピース矯正を提供しています。経験豊富な歯科医師が、あなたの症例に最適な治療法をご提案いたします。まずはお気軽にカウンセリングにお越しください。
詳しくはココロデンタルクリニックのホームページをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。あなたの素敵な笑顔のお手伝いをさせていただきます。
ココロデンタルクリニック 院長小林 弘樹 Hiroki Kobayashi
経歴
2010年 日本大学歯学部卒業
2010年 日本大学歯学部附属歯科病院勤務
2011年 大崎シティデンタルクリニック勤務
2015年 麻布シティデンタルクリニック勤務
2017年 ココロデンタル恵比寿
2021年 ココロデンタル西麻布